ぽんぽこたぬきのブログ

思ったことや出来事を書き殴るブログ

岡山のド田舎で行われる、サル軍団とおじいの戦争

 

あれは、ちょうど20年前。僕がまだ幼稚園児だった頃の話。

 

僕のおじいは、岡山県井原市という、僕の家から車で二時間ほどかかる、ド田舎、というか山の中に住んでいた。

1年に2,3回、両親に連れられおじいの家を訪れていた。

おじいの家は昔ながらの日本家屋で、庭も広い。

その日も、井戸の水を汲んでみたり、庭のど真ん中に生えている大きな桃の木に登ったり、小石ばかりが山ほど入っている謎の木箱を見つけたりして遊んでいた。

おばあが作った夕飯を食べて団欒をしている時、窓から夜空を見上げたおじいが、ふと言った。

 

「こりゃ、明日は来るじゃろうな」

 

 その言葉が何を意味するのか、少しも知らない僕は気にとめることもなく、早々に布団に入った。

 

次の日

 

朝6時、いや5時半にすらまだなっていないような早朝に、突如おじいに叩き起こされた。

「起きぃ、起きぃ!来たで!ほら行くで!」

眠い目をこすりながら、言われるがまま庭に出た僕は、塀のすぐ先にある山を見て、震え上がった。

 

山頂に、30、いや40匹は居るだろうサル軍団が、ずらっと横並びになり、じっとこちらを睨みつけていたのだ。

 

狙いは、桃の木。

 

殺される、そう思った。40匹のサルに対して、こちらは幼稚園児。

やられる。全身が震え、足がすくんで動けない。サルから視線をそらすことすらできない。怖い。誰か助けて。そうだ今はおじいしかいない。おじい、おじいは一体今どうしているんだ?震えながら横を向きおじいを見ると、

 

ウソップしか持ってないような巨大なパチンコに、石をこめサルめがけて構えていた。

 

なんだこれは!?何が起きているんだ?というかこれから何が起ころうとしているんだ!?あ!よく見たらおじいの足元に、昨日見つけた石が山ほど入ってる木箱がある!

 

再びサルに視線を戻す。睨み合うおじいとサル。緊張したこの時間は、今思い返すと1時間にも感じられたが、実際は数十秒ほどであっただろう。

突如、サル軍団の真ん中にいるボスザルがウキィィィィィと叫んだかと思うと、

サル軍団がおじいめがけて一斉に山を降りてきた!

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!

 

う、うわあーーーーーー!

 

やばい!やばいってこれ!殺される!おじい!おじいーーー!

 

瞬間、おじいは石を撃つ

 

バチィィン!

ウキャァァァアア!

 

おじいが撃った石は見事サルの胴体に命中し、そのサルは山へと逃げ帰っていく。

石を撃つ、サルにあたり逃げる、石を撃つ、サルにあたり逃げる、もう石を5個ほど握り連射する。

そうして、

40匹いたサルが30匹になり、20匹になっていく。

 

もう完全に、オーク相手に無双するレゴラスそのものである。

 

頑張れ!頑張れレゴラス!じゃなかったおじい!

サルたちはもう山の半分ほどまで降りてきている。 

迫り来るサル軍団、迎え撃つおじい。

頑張れ!いけるか!?早くしないと塀を越えて侵入されてしまう!

 

あと5匹!やばいサルが山を降りきってしまった!あと3匹!もう塀の間近だ!あと2匹!いけ!おじいいけ!ついにあと1匹!

うわああ!

ついに塀に足をかけるサル!

 

うわあああああ!ついにきたあああ!おじいとサル、その距離1メートル!

 

バチィィィン!ウキャァァアア!

 

 

 

 

・・・

 

やった・・・

 

ついにやった!

 

桃の木の防衛に成功した!

 

最後の一匹が逃げ帰ったあと、僕はヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。

そんな僕に、おじいはさも何事もなかったかのように「朝ごはんにするで」と声をかけた。

この日のこと、あの光景は、今でも鮮明に思い出せるほど、強く、強く記憶にきざまれた。

 

 

 

 

そして今年の正月、上京して忙しかったのもあり、数年ぶりにおじいの家を訪れた僕は、この話をおじいに覚えているか尋ねてみた。

 「はっはっは、そんなこともあったかの」

 おじいは、本当になんでもないことのように言った。僕にとっての一生忘れられない出来事は、おじいにとっての日常でしかなかった。

 「今でもまだサル来るの?」

「ああ、まだ来るでえ。でもわしも年とって、あの頃のようにはいかんようなったけん、もっぱら今はこれじゃなあ」

 

奥の部屋から戻ってきたおじいは

ゴッリゴリのエアガン(ガスガン)を5丁持っていた。 

ハンドガンとかじゃない、長さも1メートル弱くらいあるガチのやつだ。

「こっちのマシンガンは40発装填できる。こっちのは威力がすごくて100均のフライパンならすぐ穴あけられるで」

 

驚きで話についていけていない僕を尻目に、おじいはさらに流暢に話す。

「ほんで、わしがエアガン使っとる言うたら、みんなそりゃあええ言うて、買い方がわからんけんわしにも買ってくれー言うんじゃ。じゃから、みんなの代わりに買ったげて、そのお駄賃として3000円ずつ貰っとったら、これがすげえ小遣いになるんじゃ。」

 

なんてこった。

 

おじいは、武器商人になっていた。

 

数年間会っていない間に、そんなことになっていたとは。しかもよくよく話を聞いてみると、その集まったお金で去年の頭にビットコインを買い、とんでもなく儲けたらしい。 

昔から新しい物好きなおじいだったが、今や仮想通貨にまで手を伸ばしていた。

 

本当に、いつになってもエキセントリックなおじいだった。

長生きして、ぜひまた僕を驚かせてほしい。